先日、木村秋則氏と野口勲氏のダブル講演会に参加してきました。
ものすごーい人気で、すぐに完売してしまったそうです。
なので会場は満席。
でも、聞いていて違和感を感じました。
変な事件が起きるのも、子供が落ち着かないのも、癌になる人が多いのも、みーんな農薬のせい。日本は世界一農薬を使っている国だと棒グラフを見せての説明。(7,8年ほど前に聞いたときと論調は同じだけれど、あのころは棒グラフになってなかったっけ)
うーん、農薬のせいでいろいろ事件が起きているとは思えないし、日本の気候風土で収量をあげようと思ったら、必然的に農薬はある程度必要になるわけだし。
浜松のお茶園の取材に行っていました。ずっとウワサで静岡のお茶に使っている農薬の量は半端じゃないと聞いていたので、チャンス!と思って聞いてみたら、手をかけようとする人は農薬を使うけれど、放置型の人はほとんど使わない。あらま!まあ、取材地域の生産者の人たちは、県内一の規模で有機無農薬栽培をやっている人たちなので(ということは日本一?)、もともとそんな傾向なのかも。
先日のある研究会では、兵庫県豊岡のコウノトリの取り組みを例にあげて、農薬のせいでコウノトリが減ったとよく報道されているけれど、数字できちんと検証すると農薬を使い始めた昭和30年代にはすでに絶滅寸前だった。原因は人間による乱獲。当時は害鳥だった。笑っちゃいますね。もちろん生態系という観点から、復活への取り組みは正しい方向性だと思います。
10年以上前に「有機野菜って何?」をテーマに雑誌を丸ごと一冊作ったときに、青梗菜で硝酸体窒素の実験や、ニンジンを数日放置した場合の有機栽培と慣行栽培の違いなど、いろいろ比較をしてみました。
あのころと、木村さんの事例がほとんど同じ。
有機はそういうところで語るしかないのかなあ。
有機栽培なら、無農薬栽培なら、おいしい、安全という思い込みでいいの?
だからといって、農薬をたくさん使いましょうなんてことは思わないけれど、冷静な視点を常にもっていたいと思います。
とっても気になったのは、お隣に座っていた女性が胸の真ん中で手を握り合わせて、うっとりとお聞きになっていたこと。木村さんの業績は認めますけれど、ね。彼ほどの実績があれば、観察して気がついた驚異の生態系の中で小さな虫たちが果たしている大きな役割とか、土中こそ作物の出来を左右するポイントだといった具体の話に比重を移して、もっともっと語ってほしいです。各地で指導されているようなので、その変化の過程や、ちゃんと失敗例も。
このところ、ミツバチのことをいろいろ知る機会が増えたら、いかに勝手に思い込んでいること、知ったつもりになっていることが多いかに気づく。
それとわかりやすい敵をつくって説明されると、つい、おお!と思ってしまうこと。敵は本能寺、すなわち私たち人間の内部に巣くう「欲」
だということを忘れないようにしなくっちゃ、です。
2008年に刊行された武田邦彦著「間違いだらけのエコ生活」がなかなか面白いです。武田氏の持論には賛否両論あるかと思いますが、最後の章の「では、私たちはこれから自然とどう付き合っていけばよいのでしょうか?」の答えが「ほかの生物の生存権と所有権を認めること」というのが実に明快でした。まさにみつばち百花!なのでした。


人がつくる風景、すごすぎ・・・。
逆立ちして撮影したわけではありません。そんなことできないし。
単にカメラを少し下に向けただけ。