なので、つい手を出してしまう。
以前、小劇場ばかり追いかけている演劇好きの人に鹿殺しが面白いと聞いていたので、行ってみた。
お正月から、「モーツァルト」宝塚2本、オペラと続いたので、そろそろ小劇場もいいかなと。
こってりした生クリームたっぷりのケーキが続くと、桜餅が食べたくなるような感じ。
と思ったら、桜餅というよりも屋台の生クリームたっぷりのパンケーキみたいだった…
これはロックミュージカル・・・なのか?
やたらと大音量のロックがところどころ演奏される。
重低音はがんがん響いてくるのだけれど、肝心の歌詞がさっぱりなにを言っているんだかわからない。
おばさんの耳がついにロックを受け付けなくなったのか?
連れ合いを亡くした姉と弟がそれぞれの息子を二人ずつ連れて一家をなす羽根田家。
家業はどうやら地方の土建屋。姉の洋子は、一緒に棲み始めたとたんに性格が豹変し、オトコと失踪してしまう。残された弟の大地は、4人の子供たちを厳しく育てる。
この厳しさが、なにがなんだかよくわからない厳しさなのだ。
やたらと怒りまくる。
姉の息子の兄五郎には特に厳しい。なにかと言えば「出て行け〜!」と怒鳴り、五郎は「出て行かない!」と叫び返す。
弟の三太はぜんそく持ち。大地の息子の兄はミュージシャンになりたくて上京。弟の二生は小説家志望で母屋の隣の小屋にひきこもり。
まあ、ありそうな一家ではあるけれど・・・
そして、大地が屋根から落ちて亡くなってしまう。そのとき一緒にいたのは五郎・・・
嫌疑が五郎にかかり、役者志望の三太の空想世界が、ある日、「スライド」しちゃう。
ここからはロックな展開になるんだけれど・・・
ちょっとしつこい。
若者は叱られたい願望がどこかにあるのね。本能的にそれをバネにして、飛び立つきっかけにしているわけだ。でも、ラストに示されるのは、羽根田家で虐げられていた人物による反逆。なんだかんだ言っても、本物の抑圧されたものの反逆に対して抵抗力はない。その直前に大地が屋根から落ちた理由がわかり、家族の絆が生まれたとたん、本当の悲劇が一家を襲う。家族の中で傷つけあっていることと、外界で生まれる齟齬との間にははるかに隔たりがある。その部分だけで言えば、ちょうどイスラム国の人質事件などに符号する示唆に富んだ作品だった。
観ながら、35年ほど前に観てやたらと感動した映画「青春の殺人者」を思い出した。そんな時代もあったのね。あそこから遠いところに来てしまった。観客は20から30代が中心だった。
チラシのイラストはハエ。ミクロな世界の象徴だった。ミクロな世界を観て行くと、マクロな世界に行きつくらしい。
