2005年12月07日

未来へのてがかりとしての山村とは

白水智著「知られざる日本 山村の語る歴史世界」NHKブックス

「日本人の主たる生業は稲作であった」ということが、単なるイメージであった、ということに気づかせてくれる本です。

先週の飯尾醸造さんのお話も目からウロコだったけれど、この本も思わず身を乗りだしてしまう「知られざる日本」を目の前に広げて見せてくれる。このところ、会う人ごとに、読んだ?と聞く私。たまにこういう本に出会えるとうれしくなります。

日本の森林率は67%。先進国の中では桁外れに高い。そして四方を海に囲まれている。
が、海の民も山の民も、いつの間にか米の石高が地域の豊かさの指標になり、農村というあいまいな言葉で大きくくくられてきたのではないか。そのため、水田のない山村は「貧しい」という思い込みで山村独自の生活文化の奥行きが見落とされてきたというわけです。

面白いのは、江戸時代の紀行文を書いた当時の筆者もまた取材しながら山村生活は大変だという思い込みがあって、そういう江戸の人間の思い込みに対して、山村の住人はわざと貧しい、無学な私たちを演出するというサービス精神に富んでいたふしがあるということ。
古文書などから推察する歴史学と、聞き書きを基本にする民俗学の両方の見方を駆使して、その狭間で見落とされてきたものが浮き彫りにされています。

山村生活は自給自足とよく言われるけれど、味噌一つとっても塩は外から得なければつくることができなかったわけで、昔から完全な自給というのはほとんどなかったとも。結局、「山・海・平地がそれぞれ役割をもち、交流することで歴史を築いてきた」のです。

とはいえ、かつて山村の暮らしを維持してきたエネルギー(木炭)や食料はすでに山林から得ることがなくなってしまったのも事実。が、今、持続可能な社会づくりに向けて、山村を維持し続けてきた資源利用の循環性こそが見直される必要があるのではないかとあり、ここからの文章は、もうゾクゾクするほどの「よくぞ、おっしゃっていただきました!」なのです。(本全体がそうなんですけれど、ね)

私たちがLJを立ち上げたのも、今、試行錯誤の上、取り組んでいることも、「伝統的生活文化と「先進」がうまく共存していけるような理念と施策を構築」するためなんですから。
ああ!283ページの「先進性と伝統との共存に向けて」から最後の部分を全部ここに書いてしまいたい!もやもやしていたことを全部きれいに整理してもらった気がします。

変な紹介の仕方ですみません。でも、1冊丸ごと紹介したくなる、そんな本です。当分、いつもバックに入れて持ち歩いてしまいそう。
1,160円です。

ラベル:山村
posted by Luna at 23:09| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
構想日本の養蜂と炭の話の回でお会いした者です。ホームページもとても立派ですね!

実は私も、この本を本屋で偶然見つけ、思わず購入してしまいました。今、宮本常一の「忘れられた日本人」(岩波文庫)と平行しながら読んでいるところです。

関連記事見つけました。
http://mytown.asahi.com/chiba/news.php?k_id=12000150512060002

法政大学/中筋直哉助教授の↓この文章もいいですよ。
http://www.hosei-hurin.net/free/mm200405_02.html

進士五十八さんのこの本は、本当に素晴らしかったですよね。
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=9976649800

今月末、私の所属するNPOで、静岡県三島のグラウンドワーク活動をしている渡辺さんを講師に呼び、その魅力的な活動を語ってもらいます。数少ない戦略的なNPOと言っていいでしょう。よかったらお越し下さい。
Posted by 斉藤哲也 at 2006年01月22日 04:32
斉藤さんこんにちわ、浦嶋です。レーナさんの交流会以来ですね。投稿ありがとうございます。

私は今、岩手に来ています。先ほどまでとある地区の公民館長さんと、今度行う炭焼きツアーの相談をしていました。
70歳になる館長さんが、炭焼き、植林、そして山で稼げなくなってから勤めに出たことなどをお聞きし、一人の方の仕事の変遷が、まるで戦後50年の日本経済の変遷を聞くようでした。昭和30年代、山1町分でクラウンが買えると言われ、懸命に植林をされたこと、それが木材価格の下落によって、今の後継者にとっては「いらない山」として放棄されていること。日本が進めてきた経済合理性の歪みを考えずにはいられません。
今は集落の過疎化、高齢化が進むなかで、地域の廃校と、地元の技術や知恵をもった人材を活かしながら、少しずつ交流に努めていこうと、考えています。もっと多くの日本人が、日本の農山漁村に目を向けてくれたらと願わずにはいられません。もしよかったら、炭焼きツアーにご参加ください。また詳細は、当HPでご紹介したいと思います。
Posted by ローカルジャンクション21事務局 at 2006年01月22日 19:53
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