2007年01月16日

栃と餅 食の民俗構造を探る

tochitomochi.jpg今回の晴耕雨読のお供は、野本寛一氏著「栃と餅 食の民俗構造を探る」(岩波書店)です。
1月第1週目の「今週の私」でもご紹介しました。

お正月に餅と里芋は欠かせない食材です。
この餅の食感は独特なもので、かなり日本独自のものです。
この本によると、日本人はネバネバ、ネチネチ、モチモチといった食感を持つ食物を好むとあります。
儀礼食として里芋をつぶしてつくった芋餅の延長上に餅があるとのことです。

最近、私は後藤さんの発芽玄米餅にはまっていますが、発芽玄米を食べるようになったのはいつのころからなのでしょうねぇ。玄米で食べるよりも、栄養を吸収しやすいそうです。
時々、ふと思うのは、昔は重労働だったから米や芋をたくさん食べる必要があったけれど、今は昔ほど体を動かさないから、何を摂取するのが効率がいいかのということです。
できるだけ種類の多い食材を少しずつバランスよく食べることに尽きるのでしょうね。

この本の目次の中にある「救荒食」という文字に食の風景の劇的な変化を感じさせられます。

さて、本題の本のご紹介は下記へ。今週の私とほぼ同じ内容です。


民俗学の視点から見ると、食とは「生きるために食べる」ことだったというのがよくわかります。

今はグルメだ、幻の逸品だとか、テレビをつければ食べ物番組、雑誌を開けば、レストラン情報、食べ物情報が氾濫しています。
タレントたちが食べてまわっているものは、本当にあんなにおいしいのかしら・・・とよく思います。その前に、食べているやつらはどの程度の舌と見識を持っているのぉ?とも。
ロケ弁と焼肉ばっかり食べている人に「おいしい!」とか「ウマイ!」と言われてもねぇ。

かつて食とは、一年間、どのように家族が飢えることなく過ごしていけるかということが最重要かつ最大の課題だったことから、さまざまな食べ方、食文化が生まれてきたのです。私は幸いにもカデメシと呼ばれるような米に大根を加えて食べるような経験はしていませんが、ほとんどの地域で何かを米に加えて食べていました。そもそも団子も、クズ米を活用したものだったのです。それは余すところなく食べきる知恵と技術でもあったのです。

この本の表題にもなっている「栃」は今ではすっかり日本人の食生活からは姿を消してしまった食材の一つです。
スローフードの代表選手みたいな栃餅は、昨年まで参加していたニッポン食育フェアの風土倶楽部ブースで朽木村産のものを販売したところ、飛ぶように売れました。懐かしいと思う人が多かったのでしょう。
私も食べたことがないのに、不思議にどこか懐かしさを感じました。縄文時代からのDNAが組み込まれているのかな?
この本には、日本各地での聞き取りによる栃の実の食べ方の表が掲載されています。
私は餅しか知らなかったのですが、そば粉と合わせて熱湯を注いで掻く、味噌汁をかけて掻く、飯にかける、煮物に入れる、など実に多様です。

余談ですが、栃は、針葉樹に切り替えるための森林伐採や宅地開発で山が切り開かれたことにより、激減してしまった樹木の一つです。良質な蜜が出るため、蜜源植物として養蜂家にとっては大切な木ですが、昭和45年ごろと比較して40.3%に減少しているそうです。

食糧は決して余っているわけでもないし、公平に分配されているわけでもない。
なのに大量生産・消費・廃棄の構図から抜けることができない。
一方でマグロの漁獲量が制限されたり、日米中による大豆の争奪戦が南米で始まっていたり、不安な動きが徐々に出始めています。
今年は、ついに過去最高気温を更新しそうだという気象予報も出ています。
気候変動の波は確実に迫ってきています。

昔の知恵や技術を役に立たせないと飢えてしまうときがくるとは考えたくないけれど、今、一番必要なのは、こうした食法に息づく思想をきちんと受け継いでいくことでしょう。食育も、環境教育も、ここをはずさないで欲しいです。

また、食にはもう一つの重要な側面である「食の結合力」「食による連帯強化」を手繰る民俗思想があります。
野本氏は、柳田国男が書いた「明治大正史 世相編」に収められている「小鍋立と鍋料理」で彼が怖れた「火の分裂・竈の分裂」を今こそ、再考しなければならないと言っています。

家族、集落、村…誰と何をどんなふうに食べるのか。
そして、丁寧に、きれいに、おいしく食べきることこそ、暮らしの基本だと思い起させてくれた本でした。

ラベル:食育 食文化
posted by 風土倶楽部 at 22:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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