2013年12月19日

観劇日記 「月雲の皇子」

今年5月に宝塚のバウホールで観た宝塚歌劇団月組の「月雲の皇子」。
もう一度観たいと思っていたら、好評だったため東上することに。が、チケットは即完売であきらめていたところ、開幕直後にわらわらと譲渡チケットがネットに出てきたので、ゲットして急きょ観られることに。
やはり年末のこの時期、急な用事、風邪などの体調不良といろいろあるよね。
おかげさまで、かなり良席で観ることができました。
そ、その替わりにシアターコクーンの「マクベス」は人に譲ることに。
まあ二兎追うものは一兎をも得ずということで、一兎にしておきました(笑

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銀河劇場は、モノレールか、りんかい線の天王洲アイル駅前だから、ちょっと遠い。
けれど、こじんまりした劇場で、オペラグラスが必要なかった。
隣と前の人たちは、使っていたけれど(笑

ほんと、観てよかったです。
今年観た中で、ロミジュリを除外して、燦然と輝く1位!!!
いや、今まで観たお芝居の中でもかなり上位。
脚本がとにかくよく練り上げられていて、構図が見えやすく、セリフがすごく深い。

古事記と日本書紀に記されている衣通姫伝説に題材を得た作品。
大和の礎がまだ定まらないころを舞台に、人だけが享受できる文化と、人だけが避けられないお互いに殺し合う性のぶつかり合いをとても細やかに描きこんでいる。

木梨軽皇子と穴穂皇子は兄弟。幼いころ、戦火の中で赤ん坊を拾い、守り抜こうと誓い合う。妹として育てられ美しく成長した衣通姫を、二人が女性として愛し始めたころ、彼らの父親の天皇が崩御する。どちらが後を継ぐのか。
気性が優しく、歌を愛する木梨は、異端の民“土蜘蛛”にさえ情けをかけてしまう。そんな木梨の良さをわかりつつも、まだまだ脆弱な国の基盤を強固にすることが平和のために必要と考える穴穂。ときには土蜘蛛を人とも思わず殺戮することをいとわない“強さ”を持っている。
渡来人の側近に悪魔のような誘惑をされた穴穂。政治的な思惑に翻弄され始める皇子たち。やがて、穴穂は木梨を陥れ、伊予の国へと流刑にする。そして、木梨の愛した衣通姫を妃に迎える。それを知った木梨の心は歌を忘れ、異端の民のリーダーとなり、大和に刃向う・・・。

渡来人により、文字がもたさられ、語彙が増えていく時代。
美しい、きれいという言葉が、まだ、共通語ではなかったころ。
1幕の終わりごろ、木梨が宮廷に迷いこみ、捕らわれてしまった土蜘蛛の若者に花が「美しい」ことを教える。若者は、美しいという言葉を知らず、花の美しさを「お母さんみたいだ」という。
が、その母は、彼ら子どもたちに食べさせるためにろくに食べるものも食べず死んでしまったという。
こんなシーンの一つひとつが、物語のすべにつながっていて、どのセリフも聞き逃せない。

私は年齢のせいか、2幕の天皇の妃である大中津姫が、なさぬ仲の衣通姫を不憫に思い、逃がすシーンに涙。
姫が去ったあと、乳母とともに兄弟に拾われてきた姫を育てた日々を「まるで夢のようであった」というシーンに涙、涙、でございましたたらーっ(汗)

そして1回目に観たときには、浅はかな私は、衣通姫の最後が物足りなかったなどと言っていたけれど、あの最後こそ、この物語の重要な部分でした。今、思い出しても涙たらーっ(汗)

大がかりなセットではないけれど、簡素な中にとても雰囲気のあるセンスのよい舞台が作られていて、幕あけとともに古事記の時代に迷いこんでいくことができる。
舞台の力って、すごいなあ。
その舞台をひっぱっていく役者の力も。

月組の若手が中心のこの公演のレベルの高さときたら!
木梨の珠城りょうと穴穂の鳳月杏の安定感たるや…。
歌、芝居、ルックスとすべて揃っていて、魅了してくれる。
衣通姫の咲妃みゆは、5月のときよりも一段と姫らしくなっていた。
セリフだけでなく、立ち居振る舞いまで、姫が背負っている宿命を感じさせるとは、役者やのう…。
静かに話すセリフの言い回しが見事。

脇を固める中では、博徳の輝月ゆうま、大長谷皇子の朝美絢、伊予の蜘蛛族の若者の千海華蘭、伊予の蜘蛛族の孤児パロの晴音アキなどがとっても目立った。
そして、まだ配役の中には名前を載せてもらえないけれど、木梨に国を治める難しさを痛感させ、自分は適任ではないのでは?と不安を抱かせるこの作品の重要なシーンを担う蜘蛛族の若者・佳城 葵。
月に向かって飛ぶ蜘蛛の銀色の糸が見えるようだった。地を這うように生きるものたちが抱く熱い思い。
その思いが、失意の木梨に乗り移る怒涛の2幕を暗示するシーンだ。

どの生徒も、的確に自分の役を演じていて、舞台に緊張感がみなぎっていた。

ゆうまは、専科の夏美ようと十分渡りあっていて、これで95期生とはすごい!
95期生は大豊作の年ですな(笑
10年ぐらいに一度、そういう年があるのかもね。

月組の若手は、「ロミオとジュリエット」の新人公演で本公演に匹敵するほどの充実度で驚かされたけれど、またしてもほぼ同じメンバーでここまでやるとは。
月組だけみていると、宝塚の未来は明るいような気さえしちゃうなあ。

国という形が出来上がっていく中で、一人一人の生きざまが埋もれていく。記録をすることで本当の記憶が消されていく。政治とはそういう一面を強くもつもので、国家はその政治によって動かされていく。こんな骨太な内容の公演にも、きちんと愛と夢をちりばめ、木梨と衣通姫の悲恋に泣ける。宝塚が100年続いてきた理由は、ここにある、ね。

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上田久美子さんの次回作「翼ある人々」を観ないとなあ…でも、またしても完売。。。なんとかなるか。

ラベル:宝塚歌劇
posted by 風土倶楽部 at 23:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 極私的観劇日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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