2015年07月15日

「蜘蛛女のキス」と「毛皮のヴィーナス」

ちえさまの舞台は10月までないので、その間にハロルド・プリンスの関わった作品の予習と復習に勤しむことにした。

まずは「蜘蛛女のキス」
公開されたころ、見たのにほとんど記憶になし。
ウィリアム・ハートの女装は印象に残っていたんだけど。

残念ながら、映画は原作を映像化したものでミュージカルではない。
ミュージカルの映像は、YOUTUBEに少しアップされている程度。
日本でも、何度か上演されていたのに…観ていればよかった。

内容は大きく違わないだろうから、とりあえず映画で予習のような復習のような観賞をしてみた。

すごくいい映画だ・・・
舞台は南米のどこかの国。独裁的な政治が行われていて、反政府の活動家はどんどん捕えられ、拷問にかけられている。
ゲイのモリーナは、未成年者に性犯罪を犯し、捕えられて、活動家のヴァレンティンと同じ二人だけの独房に入れられた。
夢想家のモリーナは、好きな映画のストーリーをヴァレンティンに聞かせたりして、どんどん接近していく。
というのも、彼は仮釈放をエサにヴァレンティンからゲリラのアジトなどの情報を聞き出すように刑務所長から言われている。
蜘蛛女というのは、モリーナのイメージする話の中に出てくる、孤島で自ら蜘蛛の糸で縛られ、その場所から逃れられなくなった女の元に男が打ち上げられてきて…というもの。

モリーナの語るストーリーが映画の伏線にもなっている。そのストーリーが映画として映画の中に挿入されてくる。その中のヒロインと蜘蛛女、ヴァレンティンの愛する女性の3人を同じ女優が演じているという次第。
結局、モリーナは、うまくヴァレンティンから情報を聞き出す。が、ヴァレンティンを愛してしまったモリーナは出所してから、彼の希望通りゲリラと連絡を取る。それは、刑務所長たちのワナでもあり、後をつけられ、逆に囮だとわかってしまったゲリラに殺されてしまう。一方ヴァレンティンは、拷問にかけられ瀕死の床で愛する女性=蜘蛛女と島で戯れる夢を見ながら、息絶えていく…

モリーナ役のウィリアム・ハートの演技が素晴らしい。アカデミー主演男優賞やカンヌの賞を受賞したのは、大きくうなづける。
ゲイという中途半端な立場の若者の生きるむなしさと愛に殉じる生き方をとても切なく演じている。
ラウル・ジュリアのヴァレンティンも、とても魅力的な人物像になっている。モーリスは最後に命をかける価値のある人に出会えたことに満足していたことをうかがわせてくれる。
そして、3役をしているブラジルの女優ソニア・ブラガ。なんという気品、色気、妖しさ。
自分の理想とするもの、すなわち蜘蛛女に絡め取られて身動きができなくなる男たち。
ヴァレンティンにとっては、革命と愛する女との暮らしの成就。モリーナにとっては、ゲイの自分を認めてくれる人に会えること。

これをミュージカルにした人もすごいけれど、演出したハロルド・プリンスもすごいと思う。シーンは、ほとんどが刑務所の中。それも男二人が愛情を深める話。その接点となるのが蜘蛛女。

ミュージカルを観たい〜。


「毛皮のヴィーナス」

これもまたまたすごい映画だ〜。
監督はロマン・ポランスキー
舞台演出は初めての脚本家の男トマと、オーディションに遅れてやってきたちょっとあばずれ風の無名の女優ワンダの2人だけの登場人物。
ワンダは、もうオーディションは終わったというのに強引に舞台にあがり、芝居を初めてしまう。
最初は、うんざりしていたトマだが、ワンダの演技にだんだん魅了され、芝居を続けることになる。
自分が書いた脚本なのに、新たな解釈が施されたり、新しいセリフが加えられたり、最後にはシーンも付けくわえられる。
芝居とは、こういうものなのか…と目が離せなくなった。

トマが書いた芝居にトマ本人はどれくらい存在しているのか。
彼が本当に伝えたいことは、彼自身もわかっていない。セリフをワンダが言うことで、初めてトマ自身が気づかされることも。そこから新たな自分がどんどん出てきて、マゾヒズムを情熱の一つとして捉えようとしていたトマの中に、異様な陶酔とともにマゾヒズムに溺れていく自分が生まれていく。

フランス映画だなあ〜。理屈と感情が網目のようにめぐらされ、見る側もからめとられていく。
芝居小屋に行くときのワクワクする感じを覚える冒頭部分。そして、その小屋を後にするラストシーン。

トマ役のマチュー・アマルリック、ワンダ役のエマニュエル・セニエ
まさに舞台がそのまま映像になっている(と思われる長回しなのだ)。
目の動き、表情、手の動き、どれも計算されつくした芝居の応酬が続く。
役者にとっては、こういう舞台はやりがいがあるのだろうなあ。
どうやってセリフを覚え、なりきっていくのか。
すごいものを見せていただきました。





posted by Luna at 17:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 極私的観賞日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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