2016年06月21日

新国立劇場「あわれ彼女は娼婦」と東京宝塚大劇場「こうもり・The Entertainer」

30年前にロンドンにいたころ、RCAの「あわれ彼女は娼婦」を見て、当然、ちんぷんかんぷんだった。そんな英語がわかっていたら、苦労してなかったもん。
でも、このタイトルの「'Tis Pity She's a Whore」だけは、しっかりインプットされ、いつか日本で上演されたら、観に行こうと思っていた。
なので、大好きな新国立劇場での上演を知った半年以上前から、早々にチケットもゲットし、ワクワクしていたのだった。

そうか・・・こういう話だったのか・・・

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マンスリープロジェクトの東京大学大学院の河合祥一郎教授によるセミナー「ジョン・フォードとエリザベス朝演劇」にも参加して、予習もばっちりだったんだけれど、予想以上に血なまぐさい禁断の恋だった。

ロンドンで見たときは、確か円形の舞台だったような記憶がある。
今回は、舞台の上に敷かれた赤い十字架の上で物語が展開していく。
この舞台セットは、物語を象徴していて秀逸だと思った。
そして、音楽はすべて一人のマリンバ奏者による即興演奏。これが、とても効果的だった。ときにはちょっと音楽が前に出すぎるときはあったけれど。

浦井くんみたいなお兄ちゃんが、年頃のときに目の前をうろうろしていたら、そりゃあヤバいかもね(笑
兄と妹の禁断の恋の甘美さは、ロミオとジュリエットの霊廟のシーンと重なる。
障壁が高ければ高いほど、燃え尽き、お互いを焼き尽くしてしまう。

ロミオとジュリエットよりも、血で結ばれているだけに甘美さは濃密で、まさに死に至る病ってところかな。
こちらは、病が高じて狂気に進んでしまうけれど。

中世の話だから、人間の命が軽い。貴族社会だから、貴族が平民を間違えて殺しても、正しいことをしようとしていたのに間違えちゃったんだもんで済んでしまい、権力を持っている枢機卿の心づもり一つで「倫理」が規定されてしまう。

まあ、中世も、今も、人間であるかぎり、同じ過ちを犯し続けているんだろうなあ。

河合教授によると、1608年から、劇場が室内になり、物語が緻密になっていくと同時に、劇場に経費がかかるため、席料が上がり、貴族や商人などの富裕層が観客の中心になっていったそうだ。
このころの芝居の特徴は「変装」。なんと72%以上の戯曲に変装が出てくるのだとか。「あわれ…」も、変装して、物語を複雑にしている人物がいる。今の時代は、本人確認なんていることが頻繁に行われるし、明るいから、変装、もしくは別人になりきるなんてムリだから、たとえ芝居でも、取り入れるのは困難だろうなあ。

娼婦は売春婦ということではなく、当時の女性三態である、乙女(処女)、妻(未亡人も含む)、whore(「姦淫する女」の意味となるそう。
「汝、姦淫するなかれ」十戒の六が基本になっていると河合氏。
なるほど〜、そういうことだったのか。

ラストに枢機卿に「あわれ、彼女は娼婦」と言われちゃうんだけれど、あんたに言われたくないよ、だな〜。
でも、世の中は、声の大きい人が決めつけていき、民衆はそれに従わざるを得なくなるものなのだろう。
社会システムは大きく変わっても、その法則は変わらない。

来年1月にちえさまが主演する「お気に召すまま」で共演する横田英司さんや伊礼彼方さんが出演していて、ついでに予習できちゃった。うふ♡ お二人とも、ハイレベルな演技力の方で、ちえさまはますますハードルがあがっている。楽しみだわん。


さて、そのちえさまの古巣である宝塚星組の「こうもり」の前楽をB席で観劇。
主な目的は、十輝いりす(まさこさん)のお見送り。
ちえさまの大親友だもんね。

まさこさんは、完璧にお仕事をこなしていただけれど、ゆずるちゃんと、みっちゃんの二番手とトップの二人は、いったい何がやりたかったんだろう。そもそも「こうもり」というお話は、やっぱりなにが面白いのかわからなかった。
ドタバタ喜劇なら、小柳先生の「めぐり合いは再び」のようにシンプルにやってほしい。
「こうもり」は、本当の意味でのドタバタできゃあきゃあ、わーわー言っているだけ。おまけに二人とも、男役なのに、おばさん化しているし。とっちらかりすぎ。
3重唱になると、なにを歌っているのか歌詞がまったく伝わってこない。
半分くらい寝てしまった…

それに反して、ショーの方は、展開が早く、見せ場も満載。
それぞれの持ち味がすごく生かされていた。野口氏、やるじゃん。
そして、宝塚大劇場初日と同じ感想だけれど、礼真琴(ことちゃん)の圧倒的な存在感。
次期トップに決まったゆずるちゃんをしっかりお支えすることでしょう。

それにしても、ボリウッド映画の舞台化をゆずるちゃんのために用意する劇団の戦略のすごさ。
小柳先生だし。
宝塚歌劇団のコアスタッフは、本当に優秀だと思う。

まさこさん、お疲れさま〜。
独特な空気感を持った人。これから、どんな道を歩むのか、とっても興味があります。
期待とともに。

posted by 風土倶楽部 at 17:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 極私的観劇日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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