2019年10月28日

梅田芸術劇場「Factory Girls あなたが描く物語」

「Factory Girls あなたが描く物語」大阪公演4を回コンプリートしてしまいました。
観れば観るほど、胸に迫るものが増す作品だった。

脚本が実によく練られていて、歌詞やちょっとしたセリフに伏線が張られているから、観るたびに発見があった。
サラやハリエットだけではなく、主要登場人物たちの生きてきた経緯が動きやセリフにしっかり練り込まれている。

例えば、マーシャとフローリアンの関係性。
マーシャがなにかと不器用にフローリアンのことを気にかけているセリフや動きは、同じような虐待という過去を持つからというのが徐々にわかってくる。
でも、マーシャには、前向きに生きようとする強さがあり、それがこの舞台の上ですごく大きな救いになっている。

ヘプサベスは、母を救い出したい(たぶん過酷な環境にいるのだろう)という一心で、工場長の側につく選択をしている女性。
それも、物語が進むにしたがって、わかってくるのだけれど、冒頭の登場シーンから、彼女が歌っている内容が心の叫びになっているのだ。

グレイディーズが、なぜ、人を赦そう、受け入れようとるすのかも、生い立ちからうかがえる。
人間は1人だけれど、1人では生きられないことを痛感している人間なのだ。

そして、アビゲイル。
実は、影の主役ともいえる。
一番進歩的な女性。自分の考えをもち、愚痴を言うよりも行動する。自分が正しいと判断したときには、はっきりとモノを言う。恐れない。
彼女が歌う「あんな場所に二度と戻らない!(ニュアンス)」を聴くと、彼女は前だけを向いて生きている人というのがはっきり伝わってくる。
彼女が、サラを誘導し、リーダーへと育てたともいえる。最後には命を賭けて、背中を押すことになるところは、多くの犠牲があって、今が築かれていく象徴的な場面。

主要な登場人物の中では、比較的恵まれた環境にいるのが寮長の娘のルーシー。この物語の語り手でもある。
母親の苦労を目の当たりにしているとはいえ、のびのびと育った娘だからこそ、周囲の女の子たちのことを公平にみる冷静さももっている。
彼女のような人間が書き手となって、世の中に問うていくことで、なにかが少しずつ動き、変わっていく。普遍化していく。

ハリエットの背景もつらすぎるのだ。
ラスト近くに歌う私はペーパードールは、哀しすぎる。
会社側をうまく使って女性の地位向上をめざしていたつもりでも、いつの間にか会社に取り込まれ、利用されつくされていることを気づいてはいるけれど、苦労して築いてきた立場(工場で働かなくてもよくなったんだから)、注目される喜び(各地を講演してまわっている!)、御曹司のベンへの恋心(好きだ、好きだと言われるんだから、うれしくないはずがない)、そして、なによりも、自分の活動が女性の地位向上に大きく貢献するはずだという自負。早々には手放せないよね。
サラの動きが目障りになってしまうのは当然ですな〜。
「邪魔させないわ〜」と歌うハリエット、コワかったです(笑)

ハリエットが、会社の視察団に向かって「女性も言葉を持っているのです」というセリフに、男尊女卑の世界が象徴されていて、この言葉だけで、どんなに困難な社会だったかがよくわかる。登場人物全員が揃った場面でこのセリフ。むむむ・・・と

サラは、どこまでもまっすぐ。ハリエットが何度かセリフで言うように「正直ね」「正直すぎるわ」
だって、パパの遺言なんだもん
「自分に正直に生きなさい」

この脚本、すごい!
すべてのセリフがなにかにつながり、ちゃんと掬い取って提示してくる。
だから何度観ても、新しい発見があるし、登場人物たちと一緒に生きているような気分になれる。

そして、これらの登場人物たちをかっちりとした枠組の中に収める役割がルーシーの現在と、ルーシーのママのラーコム夫人の二役を演じる剣幸さん。
二世代にわたって俯瞰できる仕組みなのだ。
サラに「あなたは私が見たこともない景色を見せてくれたわ。感謝している。女性が世の中に向かって言葉を発するなんて(ニュアンス)」というシーンにいつも( ;∀;)でした。

本当にすごい!

板垣恭一さん、只者ではないですな。
ちえさまが、ちょっとあいさつ程度にお話ししただけなのに、私のことをすごくよくわかってくださって〜とおっしゃっていたけれど、まあ、ちえさまの人柄はちょこっと話せばわかるとは思う(笑)
でも、ここまで女性たちの輪郭をくっきりと浮かび上がらせるのはすごいです。

どんな家庭環境にお育ちになったのかしら。
女系家族だったりして…。

お茶くみから始まり、男性社会の中を多少なりとも長年泳いできたばあやにとって、過去の女たちの話は身につまされる部分と、そんな困難をみんな乗り越えてきたんだなあという感慨が激しく交錯する舞台でした。

この作品は、たくさん語り合いたくなる。
キャスティングが絶妙で、役者のみなさまがすばらしい。
ちえさまの雄姿をじっくりリピートしたいし、
ちえさま、DVDが出たら、必ず買いますよ。
だから、DVD化をよろしくお願いします!

posted by 風土倶楽部 at 11:43| Comment(0) | 極私的観劇日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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