2008年03月21日

「ラスト、コーション」のおかげで思わぬ拾いもの 夢顔さんによろしく

西木正明著「夢顔さんによろしく 最後の貴公子・近衛文隆の生涯」(文春文庫)

先ごろ、観た「ラスト、コーション」(これについての感想などはこちら)のヒロインで抗日派の女スパイのモデルが、近衛文麿の長男、文隆氏と恋愛関係にあった国民党のスパイ、ピンルーという女性。

蒋介石との和平交渉を模索していた父・近衛首相の後方支援という形で文隆氏がピンルーの手引きで国民党の本拠地重慶を訪問しようと画策していたところ、憲兵隊に見つかり、引き裂かれてしまう。ピンルーは、その後、映画のイーのような傀儡政権の特務機関の男を誘惑し、暗殺計画に加担するが失敗。22歳の若さで処刑されてしまうというのが事実に近いらしい。

以下、この小説のネタばれです。

前半は、文隆氏のアメリカ留学のことなど、日本屈指の名家の長男として恵まれた立場にいた文隆氏の青春が中心で、後半が上海を舞台に国民党の美しいスパイとの恋愛、そしてソ連での抑留生活と悲劇的な最後が描かれている。
文隆氏は、戦後、10年におよぶ抑留生活を強いられるが、8年目ごろにスパイになれば、すぐに帰国させてやるというオファーをされる。
激しく悩むが、結局、「過去、自分は近衛一族の一員ということだけで日本国内はおろか外国でも特別扱いされてきた。それは、こういう時にきちんと矜持を保ち、率先して苦難を引き受けることを前提とした特別扱いだった」と結論づけ、拒否する。この決断で文隆氏は日本に帰国することなく、無念の最後を遂げることになった。

この戦争では、さまざまな人々が日中和平に命をかけて取り組むけれど、ことごとく阻止されてしまっている。
暴走していく陸軍のせいもあるが、今、考えると歴史の必然のような大きな流れを感じる。
それは一人ひとりがつくるものなのか。神ならぬ見えない何かがなせるわざなのか。

トニー・レオンの出世作「非情城市」では台湾の成り立ちを、
「花様年華」「2046」「インファナル・アフェア」のシリーズでは中国返還問題のこと、
そして、「ラスト、コーション」では戦時中の日本と中国の関係を、
捉え直す貴重なきっかけになった。

「夢顔さん」の本のことを知ったのは、トニーさんのファンサイトで、この人ほど香港および中国映画のことをよく知る人はいないのではないか、というぐらいすごい知識。
毎回、そこを訪問するたびに、誰かを好きでいることってすてきなことだなあと思う。



posted by 風土倶楽部 at 22:09| Comment(4) | TrackBack(1) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なるほど!です。
そうだったんですか。
さっそく
「夢顔さんによろしく」
読んでみよっと。
Posted by ラストコーション at 2008年03月22日 17:51
映画を観ていなくても充分面白いです。

この小説を映画化してほしいくらいです。
でも、文隆さんをやれるような役者を思いつかない。。。ノーブルで、ユーモアがあって、スポーツマン(ゴルフは当時のアメリカで話題になるほどの腕前)で、背が高くて、英語が堪能で、行動力があって、精神力が強くて、人のことを気遣って…ほんとにこんな人がいたのかしらん?
Posted by あさだ at 2008年03月23日 00:34
TBさせていただきました。よろしくおねがいします!

文隆氏役は真田広之、中井貴一、伊勢谷友介あたりどうでしょうか?

自分はラスト・コーションは昔に見たことあるんですが、この本読んでてあの映画が全く思いつかなかったです
Posted by かわ at 2010年10月05日 16:36
ご訪問、ありがとうございます。
中井さんはいいけれど、ちょっと年齢が合わなくなってしまいましたね。ということでやはり伊勢谷さんかな。

久しぶりにトニーのファンサイトを訪問しちゃいました。「ラスト・コーション」傑作ですよね!
Posted by あさだ at 2010年10月05日 18:08
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

【近衛文隆】についてサーチエンジンで検索してみると
Excerpt: 近衛文隆 に関するブログのリンクを集めています!最新の検索結果をまとめて、口コミ情報をマッシュアップし…
Weblog: 気になるキーワードでブログ検索!
Tracked: 2008-07-22 16:04